関節の疾患|松本市の整形外科

関節の疾患 JOINT-DISEASE

関節リウマチ

関節リウマチとは

関節リウマチは、自己免疫疾患の一つで、主に関節に炎症を引き起こし、関節が腫れたり痛んだりする病気です。主に関節の内側にある滑膜が炎症を起こし、痛み、腫れ、そして最終的には関節の破壊や変形を引き起こします。関節リウマチは、特に手や足の小さな関節に多く見られ、左右対称に症状が現れることが一般的です。女性に多く発症し、40〜60歳にかけての年齢層でよく見られますが、どの年代でも発症する可能性があります。長期的に放置すると、関節の変形や機能障害を引き起こす可能性があります。

※自己免疫疾患:免疫システムが誤って自分の体の細胞や組織を攻撃してしまう病気です。通常、免疫システムは外部から侵入したウイルスや細菌などの異物を認識し、攻撃することで体を守っています。しかし、自己免疫疾患では、免疫システムが自分自身の細胞や組織を「異物」として認識し、これを攻撃するために炎症や組織の損傷が引き起こされます。

症状

関節リウマチの主な症状は以下の通りです。

  • 朝のこわばり(関節が硬く感じる、可動域の制限)
  • 関節の腫れや痛み
  • 疲れやすさ
  • 発熱
  • その他の臓器への影響

関節リウマチは関節だけでなく、全身に影響を及ぼすことがあります。
目の乾燥(シェーグレン症候群)、肺の炎症、心臓の問題、血管の炎症などが見られることがあります。
これらの症状は進行した病態や、治療が不十分な場合に起こりやすいです。

原因

関節リウマチの明確な原因は不明ですが、遺伝的要因や環境要因、感染症などが発症に関与していると考えられています。また、免疫システムが誤って自分の組織を攻撃することが、炎症や痛みを引き起こす原因です。女性に多く見られる病気であることから、ホルモンの変化も関与していると考えられています。例えば、出産後や閉経前後に発症リスクが高まることが知られています。

診断

問診・触診

医師はまず患者の症状を詳しく聞き取り、関節の腫れや痛みを確認します。問診では、症状の出現時期、関節のこわばり、痛みの部位や程度を確認します。

画像診断

関節の損傷や変形を確認するために、以下の画像診断が用いられます。

X線検査
MRI検査
超音波検査

当院では、MRIは出来かねますので必要に応じて、近隣の関連病院である信州大学病院、相沢病院、丸の内病院に紹介させていただきます。

治療方法

保存療法(薬物療法、
リハビリテーション)

薬物療法

薬物療法では、痛みや炎症を軽減するために以下の薬が用いられます。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
NSAIDsはアラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することで、炎症の原因となる物質の生成を阻害します。(炎症の原因となる物質:プロスタグランジン類)
抗リウマチ薬(DMARDs)
関節リウマチの疾患活動性に影響を与える薬の総称です。抗リウマチ薬は免疫担当細胞や免疫物質(サイトカイン)に薬が作用することで骨破壊や関節炎の抑制効果を示しますが、疾患を治癒させる薬ではありません。
生物学的製剤(バイオ医薬品)
生物学的製剤は、軟骨や骨の破壊の進行を大きく抑えることのできる薬です。抗リウマチ薬の効果が不十分な場合に用いられ、点滴注射や皮下注射で投与されます。患者さんが自分で注射できるキット(自己注射)も登場し、より便利な使い方ができるようになっています。自己注射がしやすいように開発されたペンタイプの薬剤もあり、打ちやすいだけではなく注射針が見えないなど工夫されたものもあります。
リハビリテーション

当院の理学療法士(PT)による運動器リハビリテーションでは、筋力トレーニングやストレッチを行います。関節の動きを改善し、筋力を高め、機能を回復させます。また、日常生活での動作指導を行い、再発防止のために正しい姿勢や動作を習得するお手伝いをします。
患者様一人ひとりの症状やニーズに合わせたリハビリプランを提供しています。研究に基づいたアプローチと、理学療法士の専門知識を活かし、症状回復を目指します。関節の痛みや可動域の制限でお困りの方は、ぜひ当院へご相談ください。

手術療法

関節の損傷が進行している場合や保存療法や薬物療法が効果を示さない場合には、手術が検討されます。手術には、関節の修復や人工関節の置換が含まれます。
当院では、手術療法は出来かねますので必要に応じて、近隣の関連病院である信州大学病院、相沢病院、丸の内病院に紹介させていただきます。術後は医師と理学療法士が細やかな連携をとりリハビリテーションを行います。

予防と日常生活で
気を付けること

関節リウマチを予防するためには、適切な生活習慣が重要です。日常生活では、以下の点に注意しましょう。

バランスの取れた食事

関節リウマチの症状を抑えるためには、抗炎症作用のある栄養素を積極的に取り入れることが有効です。

オメガ3脂肪酸を含む食品
魚、亜麻仁油、チアシード
抗酸化物質が豊富な果物や野菜
ベリー類、ほうれん草、トマト
ビタミンDやカルシウムを含む食品
乳製品、豆類、緑黄色野菜

定期的な適度な運動

運動は関節リウマチの患者にとって、筋力を保ち、関節の可動域を広げるために重要です。以下のような運動が推奨されます。

軽い有酸素運動
ウォーキング、スイミング
ストレッチによる柔軟性の向上
筋力トレーニング
負荷をかけすぎない軽いもの

正しい姿勢の維持

関節に負担をかけないためには、日常生活での姿勢や動作が大切です。正しい姿勢を維持することで、関節への過度な負担を避け、症状の悪化を防ぐことができます。例えば、デスクワークでは背筋を伸ばし、適切な高さの椅子を使うことが重要です。

早期の診断と治療の重要性

関節リウマチは早期に診断し、適切な治療を開始することで進行を抑え、生活の質を向上させることができます。
関節の痛みや違和感を感じた場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
当クリニックでは専門的な診断と治療を行っておりますので、ぜひご相談ください。

痛風

痛風とは

痛風とは、ある日突然、足の親指などの関節が腫れて激痛におそわれる病気で、男性に多い病気です。この症状は発作的に起こることから「痛風発作」とよばれ、発作が起こると、2〜3日は歩けないほどの痛みが続きます。
その後、痛みは徐々にやわらいでいきますが、正しい診断や治療を受けずに放置していると、同じような発作が繰り返し起こり、発作を起こすたびに病状は悪化していきます。
痛風は、尿酸の血中濃度が高いこと(高尿酸血症)が原因で、尿酸の結晶が関節に沈着し蓄積する病気です。結晶が蓄積することで、関節とその周辺に痛みのある炎症の発作が起きます。痛風は、女性よりも男性に多く、中年期の男性や閉経後の女性に発生します。若い人ではまれですが、30歳未満で発症した場合は比較的重症の場合が多くみられます。

痛風の患者数推移

2019年の厚生労働省の国民生活基礎調査(統計表)によると、痛風の患者数は、

  • 2014年:111万人
  • 2017年:123万人
  • 2019年:125万人

と増加しています。
また、高尿酸血症の患者数は痛風患者の約10倍といわれており、2019年時点では1,000万人を超えていると推定されています。
痛風増加の背景には、食生活の欧米化やアルコール摂取量の増加などによる生活習慣の変化が考えられます。

※高尿酸血症
高尿酸血症とは、血液中の尿酸濃度が高すぎる状態のことです。尿酸は、細胞がエネルギーとして利用された後にできる老廃物で、通常は血液に溶けて腎臓から尿として排出されます。しかし、尿酸が過剰に作られたり、排出がうまくいかなくなると、血液中の尿酸濃度が高くなります。
高尿酸血症自体は自覚症状がない場合が多いですが、放置すると痛風発作を引き起こす可能性が高くなります。

症状

痛風の主な症状には以下のようなものがあります。

  • 関節痛
    最も典型的な症状であり、1つまたは複数の関節に突然激しい痛みが生じます。痛みは次第に強くなりしばしば耐え難いほどで関節を動かすことや関節に触れると悪化することがあります。治療をしなければ、発作の持続時間が長くなり、頻度も増え、複数の関節が痛くなる傾向があります。
  • 発熱
  • 心拍数の上昇
  • 全身の倦怠感
  • 痛風結節
    体内に尿酸が溜まりすぎることで起こります。痛風結節は、耳介、肘、指、足などにできやすく、硬いしこりのように感じられます。通常は痛みはありませんが、炎症を起こすと赤く腫れ上がり、痛みを伴うこともあります。痛風結節は、見た目に影響を与えるだけでなく、関節の変形や機能障害を引き起こす可能性もあります。また、痛風結節があるということは、高尿酸血症が長期間にわたって放置されていることを意味し、腎臓病(腎不全など)、心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中など)のリスクも高くなります。
  • 痛風の合併症
    痛風の患者さんでは80%に肥満、高脂血症、高血圧、耐糖能異常など生活習慣病の合併がみられます。複数合併している人も少なくありません。これは、尿酸の代謝異常が上記の病気と密接に関連しているからです。

原因

痛風は、血液中の尿酸値が高くなる「高尿酸血症」が原因で起こります。
その原因は大きく分けて二つあります。

尿酸が作られすぎる

プリン体の過剰摂取:細胞の核を構成する成分であるプリン体は、体内で分解されると尿酸になります。プリン体を多く含む食品(レバー、白子、干物、エビなど)を食べ過ぎると、尿酸が過剰に作られます。

激しい運動
適度な運動を習慣化することは痛風の予防に役立ちますが、激しい運動は尿酸値の上昇を招くといわれています。 特に激しい運動で大量の汗をかいたときは、体内の尿酸値が一時的に上昇します。 このときしっかり水分を補給しないと、体内の尿酸濃度が高まり、痛風を引き起こしやすくなります。
ストレス
ストレスを感じると、体内で活性酸素が発生し、尿酸の産生を促します。
尿酸の排出が減る

腎臓の機能低下:尿酸は腎臓から尿として排出されますが、腎臓の機能が低下すると尿酸の排出が減り、血液中に溜まってしまいます。

遺伝
尿酸の排出能力は遺伝的な影響を受けます。両親が痛風の場合、子供が痛風になるリスクは高くなります。
脱水
汗をかいたり、水分摂取が少ないと、1日あたりの尿量が減り、尿酸の排出も減ります。
アルコール
アルコールは体内で分解される際に乳酸を生成し、これが尿酸の排出を妨げます。

これらの原因が複合的に作用して高尿酸血症となり、尿酸が結晶化して関節に沈着することで、痛風発作が起こります。

診断

問診・触診

いつからどんな症状があるのか、痛みの程度はどうか、過去に同じような症状があったか、家族に痛風の人がいるか、普段の食生活や飲酒習慣はどうなっているかなどをお聞きします。また、腫れや熱感の程度、押すと痛むかどうか、関節の動きが悪くなっていないかなどを確認します。特に、足の親指の付け根の関節が赤く腫れて激しく痛む場合は、痛風を強く疑います。皮膚の下に痛風結節と呼ばれる尿酸の結晶の塊ができていないかも調べます。

画像診断

レントゲン検査では、関節の破壊や痛風結節の有無を確認できます。超音波検査では、尿酸結晶の沈着や炎症の程度を詳しく調べることができ、CT検査では関節の骨や軟骨の状態を詳しく、MRI検査では関節周囲の組織の状態を詳しく調べられます。
当院では、MRI、CTは出来かねますので必要に応じて、近隣の関連病院である信州大学病院、相沢病院、丸の内病院に紹介させていただきます。

血液検査

血液中の尿酸濃度(尿酸値)を測定します。尿酸値が7.0 mg/dL以上だと高尿酸血症と診断されます。また、炎症の程度を調べるために白血球数やCRPなどの炎症マーカーを測定したり、腎臓の働きを調べるために尿素窒素やクレアチニンなどを測定したりすることもあります。

治療方法

保存療法

保存療法は、薬物療法と生活習慣の改善を中心に行われます。基本的に痛風の治療は「痛風発作に対する治療」と「高尿酸血症の改善による治療」の2つのステップを通じて行われます。

薬物療法

痛風発作の治療薬

痛風発作が起こった時は、まず痛みや炎症を抑える薬を使います。

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
痛みや炎症を抑える効果があります。
コルヒチン
白血球の働きを抑え、炎症を鎮めます。
ステロイド薬
強い抗炎症作用があります。

患者さんの状態や基礎疾患、重症度などに応じて使い分けたり、組み合わせて治療します。
※非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
NSAIDsはアラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することで、炎症の原因となる物質の生成を阻害します。(炎症の原因となる物質:プロスタグランジン類)

高尿酸血症の治療薬

痛風発作が治まったら、尿酸値を下げる薬を使います。
尿酸はプリン体から作られ体外に排泄されます。その働きを手伝う尿酸降下薬は作用の違いで尿酸排泄促進薬と尿酸生成抑制薬に分かれます。前者は腎臓に作用し尿酸が尿中へ排泄される働きを促進します。後者は主に肝臓でプリン体が尿酸に分解されるのを抑えます。

尿酸排泄促進薬(ベンズブロマロン・プロベネシドなど)
尿から尿酸を排泄しやすくすることで血液中の尿酸値を下げます。
尿酸産生抑制薬(アロプリノール・フェブキソスタット・トピロキソスタット)
尿酸を体に作る経路を抑えることで、血液中の尿酸値を下げます。

尿酸値を改善する薬をしばらく内服することで痛風発作は予防されます。その間に生活習慣を治していただくことで、お薬をなくすことができます。

生活習慣の改善

食生活改善

プリン体の多い食品を控え、バランスの取れた食事を心がけます。(プリン体が多い食品: レバー、白子、あんこうの肝、干物、エビ、カニ、イクラ、たらこ、カツオ、サバ、イワシなど)(プリン体が少ない食品: 野菜、果物、海藻、乳製品、卵など)

水分摂取

尿酸の排泄を促すために、1日2リットル以上の水を飲みましょう。

適度な運動

適度な運動は、肥満の解消やストレス軽減に役立ちます。ただし、激しい運動は尿酸値を上げる可能性があるので避けましょう。ベンチプレスなどの激しい運動(無酸素運動)は肥満解消法として勧められません。新陳代謝が活発となり、尿酸値が急上昇するためです。ウォーキングなどの軽い運動(有酸素運動)を定期的に行いましょう。

アルコール制限

アルコールは尿酸値を上げるだけでなく、尿酸の排泄を妨げるため、控えましょう。

体重管理

肥満は高尿酸血症のリスクを高めるため、適正体重を維持しましょう。

ストレス軽減

ストレスは尿酸値を上げる可能性があるので、ストレスをためないようにしましょう。

手術療法

痛風結節が大きく、日常生活に支障をきたす場合や、関節の変形が進んで痛みや機能障害が強い場合は、手術療法が検討されます。

痛風結節摘出術

皮膚を切開し、痛風結節を摘出する手術です。

関節形成術

痛風によって破壊された関節を人工関節に置き換える手術です。

痛風の治療は、長期にわたることが多いです。医師の指示に従って薬物療法を続け、生活習慣を改善することで、痛風発作の予防と合併症の発生を抑えることができます。当院では、手術療法は出来かねますので必要に応じて、近隣の関連病院である信州大学病院、相沢病院、丸の内病院に紹介させていただきます。

痛風発作の応急処置

痛風発作は、突然起こる激しい関節の痛みと炎症を伴うため、一刻も早く対処したいものです。医療機関を受診することが最優先ですが、すぐに受診できない場合もあるかと思います。そこで、痛風発作が起こった際の応急処置についてご紹介します。

RICE法

安静(Rest)、冷却(Ice)、圧迫(Compression)、挙上(Elevation)の4つの基本的な処置法です。

安静
患部を動かさないようにし、損傷の進行を防ぎます。特に初期の段階では、足首に過度の負担をかけないようにすることが重要です。
冷却(アイシング)
腫れと痛みを抑えるために、捻挫後すぐに氷や冷却パックを使って患部を冷やします。20分程度の冷却を1日数回行うことで炎症が軽減します。
圧迫
包帯やサポーターで足首を圧迫し、腫れを抑えるとともに、患部を安定させます。
挙上
足を心臓より高い位置に上げることで血流を促進し、腫れを抑えることができます。

水分摂取

水分を十分に摂取することで、尿酸の排泄を促し、症状の悪化を防ぐことができます。水やお茶など、ノンカフェインの飲み物をこまめに飲みましょう。アルコールは尿酸値を上昇させるため、避けましょう。

応急処置を行っても症状が改善しない場合や、痛みが強い場合は、早めに医療機関を受診しましょう。痛風発作は、適切な治療を行うことで、早期に症状を改善することができます。

早期の診断と治療の重要性

痛風を早期に診断し、適切な治療を開始することで、関節の損傷や変形といった重症化を防ぐことができます。
また、早期治療は痛風発作の頻度や重症度を軽減し、日常生活への影響を最小限に抑えることにも繋がります。
さらに、高尿酸血症は痛風だけでなく、腎臓病、心血管疾患、糖尿病などの生活習慣病のリスクも高めるため、
早期診断による尿酸値のコントロールは、これらの合併症のリスク軽減にも役立ちます。
当クリニックでは、痛風の診断と治療に専門的な知識と経験を持つ医師が対応いたします。
あなたの健康と快適な生活のために、サポートいたします。ぜひ一度、ご相談ください。