変形性股関節症の治療は、症状の重さや原因によって異なります。大きく分けて保存療法と手術療法に分類されます。軽度から中度の症例では、保存療法が一般的に最初に選択され、症状が進行した場合には手術療法が検討されます。
保存療法
保存療法は、手術をせずに症状を緩和し、股関節の機能を改善するための治療法です。これには、理学療法士による運動療法(リハビリ)、薬物療法、生活習慣の改善が含まれます。
理学療法士による運動療法
(リハビリ)
運動療法では、理学療法士(PT)による筋力トレーニングやストレッチが行われます。当院の理学療法士による運動器リハビリテーションでは、股関節周囲の筋力を強化し、柔軟性を高めることを目的としています。例えば、股関節を安定させる筋肉群である殿筋や大腿四頭筋を強化するエクササイズが行われます。また、日常生活での正しい動作指導も行い、再発防止や痛みの緩和を図ります。患者様一人ひとりの症状やニーズに合わせたリハビリプランを提供しており、個別のサポートで症状回復を目指します。
薬物療法
薬物療法では、痛みや炎症を抑えるための消炎鎮痛薬やヒアルロン酸注射が用いられます。消炎鎮痛薬(NSAIDs)は、関節の炎症を軽減し、痛みを緩和します。ヒアルロン酸注射は、関節内に潤滑剤を補充することで、関節の動きを滑らかにし、痛みを緩和する効果があります。
※非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
NSAIDsはアラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することで、炎症の原因となる物質の生成を阻害します。(炎症の原因となる物質:プロスタグランジン類)
※ヒアルロン酸注射
関節液の潤滑効果を高め、痛みや炎症を軽減することができます。ヒアルロン酸製剤の注射療法は、病気や症状の進行度合いに応じて適切な治療法を選択する必要があります。
手術療法
手術療法は、保存療法で十分な改善が見られない場合や、症状が進行している場合に行われます。当院では、手術療法は出来かねますので必要に応じて、近隣の関連病院である信州大学病院、相沢病院、丸の内病院に紹介させていただきます。術後は医師と理学療法士が細やかな連携をとりリハビリテーションを行います。
人工股関節置換術
(THA: Total Hip Arthroplasty)
最も一般的な手術方法は、人工股関節置換術(THA: Total Hip Arthroplasty)です。この手術では、摩耗した関節を人工の関節に置き換えることで、痛みを解消し、股関節の機能を回復させます。手術の成功率は高く、多くの患者が日常生活に復帰できることが報告されています。
関節鏡手術
内視鏡を用いて、関節軟骨の傷んだ部分を削って滑らかにすることで、炎症を改善する手術。症状の程度や年齢に関わらず、幅広い患者を対象として行なうことができます。
骨切り術
患者自身の骨の一部を切り取って活用し、変形した股関節の形を整えることで症状を改善させます。基本的には、若年かつ関節がそれほど痛んでいない患者さんが対象となります。