急性腰痛症(ぎっくり腰)になってしまったら、まずはむやみに動かず、まずは楽な姿勢(仰向けでも、横向きでも 膝を90度に曲げた姿勢が楽な場合が多いです)をとって深呼吸を繰り返してください。深呼吸には、筋肉を緩めたり、自律神経を落ち着かせる効果がありますので、痛みが楽になります。少し楽になったら、深呼吸を繰り返しながら、ゆっくりと体を起こしてきてください。
保存療法
保存療法は、手術を伴わない治療法で、急性腰痛症(ぎっくり腰)の初期治療として最も一般的です。具体的な保存療法としては、以下の方法があります。
安静
腰に負担をかけないように短期間の安静を保ちます。ただし、過度な安静は逆効果になることもあり、できるだけ早期に通常の生活に戻ることが推奨されています。
理学療法士による運動療法
(リハビリ)
理学療法士による運動療法やリハビリテーションが効果的です。当院の理学療法士(PT)による運動器リハビリテーションでは、筋力トレーニングやストレッチを通じて腰の機能を回復させます。腰の動きを改善し、筋力を高め、再発を防ぐために日常生活での動作指導も行われます。患者一人ひとりに合ったリハビリプランが提供され、専門的なアプローチで症状の回復を目指します。
コルセットの着用
痛みが強い時期にはコルセットを着用して、腰を固定しましょう。コルセットを着用することで、起床時や立ち上がる時が楽になります。
薬物療法
痛みを和らげるために、消炎鎮痛剤や筋弛緩剤などの薬が処方されることがあります。また、場合によっては神経ブロック注射なども用いられます。
日本整形外科学会、日本腰痛学会が監修した「腰痛診療ガイドライン 2019 」によると、急性腰痛と坐骨神経痛には、非ステロイド抗炎症薬、慢性腰痛には、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)の有用性が示されています。
※非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
NSAIDsはアラキドン酸カスケードのシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することで、炎症の原因となる物質の生成を阻害します。(炎症の原因となる物質:プロスタグランジン類)
※セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)
SNRIとは「Serotonin Noradrenaline Reuptake Inhibitor(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)」の略称です。SNRIの作用機序としては、一度放出されたセロトニンとノルアドレナリンの細胞内への再取り込みを阻害することで脳内のセロトニンとノルアドレナリンの濃度を上昇させ、神経伝達をスムーズにし、抗うつ作用および抗不安作用を示すと考えられています。