
股関節臼蓋形成不全
(発育性股関節形成不全)とは
股関節臼蓋形成不全(発育性股関節形成不全)は、股関節の臼蓋(骨盤側のくぼみ)が正常な形をしておらず、大腿骨の骨頭が正しく収まらない状態を指します。この不安定な状態は、股関節がずれる(亜脱臼)または完全に外れる(脱臼)リスクを引き起こし、将来的には変形性股関節症に繋がる可能性が高いです。日本では中高年女性の変形性股関節症の約80%は臼蓋形成不全が原因と言われています。発育性股関節形成不全(DDH: Developmental Dysplasia of the Hip)は、出生時から発症することもあり、特に女児に多く見られます。日本整形外科学会によると、日本人では成人男性の0〜2%、女性の2〜7%が股関節形成不全といわれています。
引用:https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/
acetabular_dysplasia.html
股関節臼蓋形成不全の症状は、個人によって異なりますが、主に以下のような症状が見られます。
- 痛み:股関節や腰、膝に痛みを感じることがあります。特に歩行時や長時間の座位後に痛みが強くなりがちです。
- 可動域の制限:股関節の可動域が狭まり、脚を自由に動かすことが難しくなることがあります。
- 歩行困難:股関節の不安定性が進行すると、歩行が困難になり、片足を引きずるような歩き方になることもあります。
- 脚の長さの不均衡:臼蓋の形状異常により、片方の脚が短く感じられることがあります。
原因
股関節臼蓋形成不全の原因は、遺伝的要因や環境的要因など、複数の要素が影響していると考えられています。
遺伝的要因
家族歴がある場合、発症リスクが高くなります。
骨盤位出産
出産時に骨盤位で生まれた新生児は、股関節の不安定性が発生しやすく、臼蓋形成不全が生じる可能性が高まります。
環境要因
新生児期に股関節を不自然な体勢で固定してしまうと、正常な発育が妨げられることがあります。例えば、足を伸ばした状態で包む風習がある文化圏では、臼蓋形成不全の発症率が高いです。
診断
診断には、問診、触診、画像診断が重要な役割を果たします。臨床診察や画像診断技術を駆使して、正確な診断を行います。
問診・触診
問診では、患者の自覚症状や痛みの発生状況、過去の外傷歴や家族歴を詳細に確認します。触診では、股関節の不安定性や可動域制限を確認し、痛みの原因を特定します。乳幼児の場合、脱臼はしていなくても股関節が不安定で脱臼しやすい場合には、逆に開排位から股関節を閉じてゆくとある時点骨頭が臼蓋からはずれるのを触知する場合があります(バーローテスト)。すでに脱臼している場合は股関節を屈曲位から少しずつ開排位にしていくとある角度で骨頭が臼蓋の中に瞬間的に入り込むのを触知することがあります(オルトラニテスト)。このようなテストなどが行われ、股関節の脱臼の有無を判断します。
画像診断
画像診断では、X線やMRIが用いられます。X線検査により臼蓋の角度や股関節の構造を確認し、臼蓋形成不全の程度を評価します。MRIは、股関節周囲の軟部組織や軟骨の状態を詳細に確認するのに役立ちます。当院では、MRIは出来かねますので必要に応じて、近隣の関連病院である信州大学病院、相沢病院、丸の内病院に紹介させていただきます。