痛風とは
痛風とは、ある日突然、足の親指などの関節が腫れて激痛におそわれる病気で、男性に多い病気です。この症状は発作的に起こることから「痛風発作」とよばれ、発作が起こると、2〜3日は歩けないほどの痛みが続きます。
その後、痛みは徐々にやわらいでいきますが、正しい診断や治療を受けずに放置していると、同じような発作が繰り返し起こり、発作を起こすたびに病状は悪化していきます。
痛風は、尿酸の血中濃度が高いこと(高尿酸血症)が原因で、尿酸の結晶が関節に沈着し蓄積する病気です。結晶が蓄積することで、関節とその周辺に痛みのある炎症の発作が起きます。痛風は、女性よりも男性に多く、中年期の男性や閉経後の女性に発生します。若い人ではまれですが、30歳未満で発症した場合は比較的重症の場合が多くみられます。
2019年の厚生労働省の国民生活基礎調査(統計表)によると、痛風の患者数は、
- 2014年:111万人
- 2017年:123万人
- 2019年:125万人
と増加しています。
また、高尿酸血症の患者数は痛風患者の約10倍といわれており、2019年時点では1,000万人を超えていると推定されています。
痛風増加の背景には、食生活の欧米化やアルコール摂取量の増加などによる生活習慣の変化が考えられます。
※高尿酸血症
高尿酸血症とは、血液中の尿酸濃度が高すぎる状態のことです。尿酸は、細胞がエネルギーとして利用された後にできる老廃物で、通常は血液に溶けて腎臓から尿として排出されます。しかし、尿酸が過剰に作られたり、排出がうまくいかなくなると、血液中の尿酸濃度が高くなります。
高尿酸血症自体は自覚症状がない場合が多いですが、放置すると痛風発作を引き起こす可能性が高くなります。
痛風の主な症状には以下のようなものがあります。
- 関節痛
最も典型的な症状であり、1つまたは複数の関節に突然激しい痛みが生じます。痛みは次第に強くなりしばしば耐え難いほどで関節を動かすことや関節に触れると悪化することがあります。治療をしなければ、発作の持続時間が長くなり、頻度も増え、複数の関節が痛くなる傾向があります。 - 発熱
- 心拍数の上昇
- 全身の倦怠感
- 痛風結節
体内に尿酸が溜まりすぎることで起こります。痛風結節は、耳介、肘、指、足などにできやすく、硬いしこりのように感じられます。通常は痛みはありませんが、炎症を起こすと赤く腫れ上がり、痛みを伴うこともあります。痛風結節は、見た目に影響を与えるだけでなく、関節の変形や機能障害を引き起こす可能性もあります。また、痛風結節があるということは、高尿酸血症が長期間にわたって放置されていることを意味し、腎臓病(腎不全など)、心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中など)のリスクも高くなります。 - 痛風の合併症
痛風の患者さんでは80%に肥満、高脂血症、高血圧、耐糖能異常など生活習慣病の合併がみられます。複数合併している人も少なくありません。これは、尿酸の代謝異常が上記の病気と密接に関連しているからです。
原因
痛風は、血液中の尿酸値が高くなる「高尿酸血症」が原因で起こります。
その原因は大きく分けて二つあります。
尿酸が作られすぎる
プリン体の過剰摂取:細胞の核を構成する成分であるプリン体は、体内で分解されると尿酸になります。プリン体を多く含む食品(レバー、白子、干物、エビなど)を食べ過ぎると、尿酸が過剰に作られます。
- 激しい運動
- 適度な運動を習慣化することは痛風の予防に役立ちますが、激しい運動は尿酸値の上昇を招くといわれています。 特に激しい運動で大量の汗をかいたときは、体内の尿酸値が一時的に上昇します。 このときしっかり水分を補給しないと、体内の尿酸濃度が高まり、痛風を引き起こしやすくなります。
- ストレス
- ストレスを感じると、体内で活性酸素が発生し、尿酸の産生を促します。
尿酸の排出が減る
腎臓の機能低下:尿酸は腎臓から尿として排出されますが、腎臓の機能が低下すると尿酸の排出が減り、血液中に溜まってしまいます。
- 遺伝
- 尿酸の排出能力は遺伝的な影響を受けます。両親が痛風の場合、子供が痛風になるリスクは高くなります。
- 脱水
- 汗をかいたり、水分摂取が少ないと、1日あたりの尿量が減り、尿酸の排出も減ります。
- アルコール
- アルコールは体内で分解される際に乳酸を生成し、これが尿酸の排出を妨げます。
これらの原因が複合的に作用して高尿酸血症となり、尿酸が結晶化して関節に沈着することで、痛風発作が起こります。
診断
問診・触診
いつからどんな症状があるのか、痛みの程度はどうか、過去に同じような症状があったか、家族に痛風の人がいるか、普段の食生活や飲酒習慣はどうなっているかなどをお聞きします。また、腫れや熱感の程度、押すと痛むかどうか、関節の動きが悪くなっていないかなどを確認します。特に、足の親指の付け根の関節が赤く腫れて激しく痛む場合は、痛風を強く疑います。皮膚の下に痛風結節と呼ばれる尿酸の結晶の塊ができていないかも調べます。
画像診断
レントゲン検査では、関節の破壊や痛風結節の有無を確認できます。超音波検査では、尿酸結晶の沈着や炎症の程度を詳しく調べることができ、CT検査では関節の骨や軟骨の状態を詳しく、MRI検査では関節周囲の組織の状態を詳しく調べられます。
当院では、MRI、CTは出来かねますので必要に応じて、近隣の関連病院である信州大学病院、相沢病院、丸の内病院に紹介させていただきます。
血液検査
血液中の尿酸濃度(尿酸値)を測定します。尿酸値が7.0 mg/dL以上だと高尿酸血症と診断されます。また、炎症の程度を調べるために白血球数やCRPなどの炎症マーカーを測定したり、腎臓の働きを調べるために尿素窒素やクレアチニンなどを測定したりすることもあります。