1. 冒頭
こんにちは。
院長ブログをご覧いただきありがとうございます。
鈴木整形外科は長野県松本市島立にある整形外科・リハビリテーション科のクリニックです。
院長の鈴木成典です。
2. 導入
新緑が美しい季節になり、外で身体を動かすのが気持ちの良い時期になりましたね。久々にランニングを始めたり、地域のスポーツ活動に参加したりする方も多いのではないでしょうか。
そんな活発になる季節に急増するのが、ダッシュやジャンプをした瞬間に足を襲う激しい痛み、いわゆる「肉離れ」です。
「ただの強い筋肉痛かな?」と甘く見て無理を重ねると、復帰が大幅に遅れたり、何度も再発を繰り返す慢性的な弱点になってしまうことがあります。今回は、肉離れの正しい知識と当院でのアプローチについて詳しくお話しします。
3. 本文(専門解説)
■ 肉離れについて
① 病態の概要
肉離れとは、筋肉が強く収縮している(力を発揮している)状態で、同時に強制的に引き伸ばされるような強い力が加わった結果、筋肉の繊維(筋線維)やそれを包む膜が一部、または全部破れてしまった状態(筋断裂)を指します。
特に、急なダッシュやストップ、ジャンプからの着地といった爆発的な動作の瞬間に発生しやすく、ふくらはぎ(下腿三頭筋)や太もものの裏(ハムストリングス)、太ももの表(大腿四頭筋)といった下半身の大きな筋肉によく起こります。
② 症状
肉離れを発症すると、以下のような特徴的な症状が現れます。
・動作の瞬間に「プチッ」「バチン」と組織が裂けるような衝撃や音を感じる
・患部を指で押さえると、ピンポイントで激しい痛み(局所圧痛)がある
・自力で力を入れたり、ストレッチのように筋肉を伸ばしたりすると激痛が走る
・時間の経過とともに、患部周辺に腫れや内出血(皮膚が紫色の斑点になる)が出現する
・損傷が重度の場合、筋肉が陥没して凹んでいるのが手で触って分かる
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③ 診断の流れ
適切な治療を行うためには、筋肉の損傷レベルを正確に把握することが欠かせません。当院では以下の手順で診断を進めます。
・問診と言診:どのような動作の瞬間に痛めたか、受傷時の状況を詳しく伺います
・触診と可動域テスト:痛む部位を特定し、関節を動かしたときの痛みの出方を確認します
・超音波検査(エコー検査):最新のエコー機器を用いて、筋肉の断裂の有無や範囲、血腫(内出血のたまり)の大きさをリアルタイムで詳細に観察します
・MRI検査(必要に応じて):より深部の筋肉の損傷や、エコーだけでは判断が難しい精密な評価必要をな場合に実施します
④ 治療の内容
肉離れの治療は、手術をしない「保存療法」が基本となります。
・急性期の処置(RICE・POLICE処置):受傷直後は腫れや内出血を最小限に抑えるため、適切な安静、冷却、圧迫、挙上を徹底します。
・薬物療法:強い痛みや炎症がある場合は、状態に応じて消炎鎮痛剤(内服薬や湿布)を処方し、苦痛を和らげます。
・段階的なリハビリテーション:痛みが落ち着き、組織の修復が始まる時期からは、硬くなった傷跡(瘢痕組織)をほぐし、本来の柔軟性を取り戻すための物理療法(電気や超音波)と運動療法を組み合わせます。
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4. 予防策・セルフケア
肉離れの再発を防ぎ、安全にスポーツへ復帰するためには、日頃からのコンディショニングが極めて重要です。以下の3つのアプローチを意識して行いましょう。
【1. ストレッチ】
肉離れを起こしやすい筋肉(太ももの裏・ふくらはぎ)の柔軟性を高めます。
・ハムストリングスのストレッチ:仰向けに寝て、片方の太ももの裏を両手で抱え、膝をゆっくりと天井に向けて伸ばしていきます。太ももの裏が心地よく伸びるところで20秒キープします。息を止めずに左右交互に行いましょう。
【2. 筋力トレーニング】
筋肉が引き伸ばされながら力を発揮する「エキセントリック収縮」の筋力を鍛えることが、最高の予防策になります。
・ノルディックハムストリングス(簡易版):膝立ちの姿勢になり、誰かに足首を後ろから固定してもらいます(またはベッドの隙間などに足を固定します)。そこから、背筋を伸ばしたまま、上半身をゆっくりと前に倒していきます。太ももの裏で体重を支えるように意識し、限界がきたら手をついて戻ります。これを5〜10回、無理のない範囲で繰り返します。
【3. バランストレーニング】
予期せぬステップや着地の衝撃に耐えられるよう、関節の位置感覚や体幹の安定性を養います。
・片脚バランス&リーチ:片脚で立ち、もう片方の足を後ろに浮かせます。軸足の膝を軽く曲げながら、上半身を少し前に倒し、両手を前に伸ばしてバランスをキープします。左右それぞれ30秒ずつ、ふらつかないように保つことで、足首や膝、股関節の連動性が高まります。
5. 結び
肉離れは、「歩けるようになったから治った」と自己判断して全力疾走を再開すると、高い確率で同じ場所を再負傷してしまいます。筋肉が元通りの柔軟性と強さを取り戻すまで、専門スタッフと一緒にステップを踏んでリハビリを行うことが、結果として一番早い復帰に繋がります。
足にピキッとした違和感や、突発的な痛みを感じたときは、我慢せずにいつでも当院にご相談ください。皆様が怪我なく安心してスポーツを楽しめるよう、全力でサポートいたします。

6. 参考文献
・日本スポーツ整形外科学会(JOSKAS) 公式サイト 監修『スポーツ外傷・障害の理学療法』
7. 著者情報
著者 院長 鈴木成典
【略歴】
東筑摩郡山形村出身
岩手医科大学卒業(昭和61年)
信州大学整形外科教室入局
信州大学病院、厚生連安曇病院、厚生連篠ノ井病院、飯田病院、県立木曽病院、相澤病院に勤務
平成11年 松本市島立に鈴木整形外科を開業
【資格・所属学会】
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会スポーツ認定医
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
